1. |
雨の記憶
05:55
|
|||
雨の記憶
川の流れを見つめていた
雨が降ると水かさが増して
表情を変える穏やかな川を
確かめるように覗いて見ていたふたり
偶然なのかそれとも必然なのか
理解できないけれど
路上に落ちていたガラスの破片が
ぴたりと重なるように
月明かりを手繰り寄せて 歩き出す
凍てつく棘が僕らを貫く
逃げ場所を探し続けてたような
いつの日か映える景色を夢見て
手と手を絡ませて
その日 見慣れた街角で
何の気なしに二人は出会うだろう
まるで明日また会えるように
何の気なしに二人は別れるのだろう
朝日を背にして 言葉も交わさずに
闇の中で混ざりあう
屋根を伝う雨の音が聞こえる
汗だらけになった胸を開いて
窓から川を眺めていた
足並みを揃えて紐を結わえて
どちらからともなく歩き出した
しとしと雨が二人を包んだ
膜に覆われて 二人は帰路へ
それぞれの眠る場所へと
|
||||
2. |
エニグマ
03:18
|
|||
エニグマ
感覚だけで生きていて
頭の中はもう 大分廃れてきている
プラスチックで汚された人生
悲劇ではなく滑稽に近い
夢を食い尽くすバクテリア
北へ南へ東へ西へ
俺はお前の後ろをついていく影
歩道橋を渡る
あと数十メートル先に奴がいる
焦らずに 昨日の夕食を思い出すような感じで
行けばいいのさ
ほら もう少しでアパートの手前だ
焦らずに
潰れたトマトのピューレのように
床に落ちて割れた卵のように
想像するんだ
たいしたことではないのさ
北へ南へ東へ西へ
俺はお前の後ろをついていく影
花束抱えて その中に隠して
笑顔は欺瞞 そこに勇気は必要ない
なんだ この 緩い 感じは
生きているのか 死んでいるのか わからない
微妙な 手応え
お前の中に 俺は居場所を作り
お前に謎をふっかけているのさ
あいつはお前の敵ではなかったのか
ふざけてないで ちゃんと答えてみせろよ
|
||||
3. |
風船
06:19
|
|||
風船
こっそりとこの世界に生まれて
どこかで交わることもなく
ひっそりと消えてゆくように
僕は さよならをしたい
放物線を描いてゆく渡り鳥に
美しい空や雲の写真に
涙を流したりするような
透明な人間になりたいので
誰かに見つけられたいとも思うし
誰にも見つかりたくないとも思うし
浮かび上がる風船のその速度を保ったまま
僕は生きていきたい
憧れた あの空は
未だ 遠く
|
||||
4. |
NZ
02:00
|
|||
NZ
たくさんの無関心が生んだ怪物が
人混みに紛れて歩いている
電車の中で転がる空き缶のように
理由がほしい
俺はお前で お前は空虚だ
刺された瞬間にそれがわかる
無慈悲で無意味な行為とは知れど
簡単に止めることなんてできない
命令してくれよ
指示をくれないか
|
||||
5. |
海辺の町
04:41
|
|||
海辺の町
薄い膜で覆われた朝に
影のない僕たちは相談しあう
今日これから行うことを
サンドイッチをバスケットに詰め込みながら
感光した写真の中を
手を繋いで歩いているみたいに
風は冷たく 空は灰色だ
足跡が波にさらわれて消える
誰も僕らを哀れんだりはしない
この町で幻になりそこなっただけ
廃墟になった要塞を
ただ遠くから眺めていただけさ
青い絵具が沈んだような夜に
色のない僕たちは報告しあう
今日いままで見てきたものを
ソーサーにコーヒー豆を入れながら
普段と変わらない生活
喧噪離れた静かな暮らし
君と僕の幸せな日々は
まだまだ始まったばかり
大津波が文明を飲み込んだ
延々と見えない毒を撒き続ける
そんなうみべの町で僕らは
素敵な未来を願うのさ
|
Streaming and Download help
If you like ながれる, you may also like:
Bandcamp Daily your guide to the world of Bandcamp